「胃の痛み」の背後に何がある?
不快な胃の痛み、それは単なる一過性のものかもしれませんが、もしかすると胃潰瘍や十二指腸潰瘍のサインかもしれません。
胃潰瘍とは、胃の内部を覆っている粘膜に生じる傷のことで、十二指腸潰瘍はその名のとおり、小腸にある十二指腸の粘膜にできる潰瘍を指します。
これらの潰瘍は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用などによって引き起こされることが多いとされています。また、ストレスや食生活の乱れも潰瘍を悪化させる要因になりえます。
国内の統計によると、成人の約1割が生涯において胃潰瘍または十二指腸潰瘍を経験すると言われています。主な症状としては、食後の胃痛、空腹時の痛み、胃もたれ、吐き気などがありますが、これらが現れるとすべての人に潰瘍があるわけではありません。しかし、これらの症状が続く場合は注意が必要です。
胃の不快感、それは胃潰瘍かも?見分けるポイント
胃潰瘍は、胃酸によって胃の粘膜が損傷し、潰瘍を形成する病状です。では、一般的な胃の不快感と胃潰瘍をどのように見分けたら良いのでしょうか。以下にいくつかのポイントを挙げてみましょう。
痛みのタイミング
胃潰瘍は、特に空腹時や夜間に痛みを感じることが多いです。食事によって一時的に痛みが和らぐこともあります。
痛みの性質
潰瘍による痛みは、しばしば「焼けるような」または「刺すような」痛みと表現されます。
その他の症状
吐き気、嘔吐、体重減少、食欲不振などが見られる場合は、胃潰瘍の可能性が高まります。
服用薬に注意
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の長期服用は、胃粘膜を損傷しやすくします。これらの薬を服用している場合は、胃潰瘍にかかる可能性が高まります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因とメカニズム
胃潰瘍や十二指腸潰瘍は、粘膜保護機能の低下と胃酸やペプシンといった消化液の過剰な作用によって発生します。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
これらの薬は痛みを和らげる一方で、胃の粘膜保護機能を弱める副作用があります。長期間の使用は潰瘍を引き起こすリスクを高めます。
ストレス
精神的なストレスは、胃酸の分泌を増加させることで、粘膜へのダメージを促進する可能性があります。
食生活
刺激物の多い食事や不規則な食生活も、胃粘膜に負担をかける因子です。
これらの原因が組み合わさり、胃や十二指腸の粘膜における自然な防御メカニズムが破壊されると、消化液による攻撃が直接粘膜に作用し、潰瘍を形成します。
ストレスと胃潰瘍、十二指腸潰瘍の関係
日々の生活において感じるストレスが、実は胃潰瘍や十二指腸潰瘍と深い関係があることをご存知でしょうか。ストレスは、胃酸の過剰分泌を引き起こし、胃や十二指腸の粘膜を傷つける原因となることがあります。このメカニズムには、「胃粘膜防御因子」と「胃酸分泌」の2つの要素が関与しています。
ストレスによる胃酸分泌の増加
ストレスは、自律神経のバランスを崩し、胃酸分泌を促進することがあります。この結果、胃粘膜は正常な状態よりも多くの胃酸にさらされることになります。
胃粘膜の保護機能の低下
また、ストレスは胃の粘膜を保護するプロスタグランジンの生成を減少させることが知られています。プロスタグランジンは、粘膜の血流を良くし、粘液の分泌を促すことで粘膜を保護しています。この保護機能が低下すると、粘膜はダメージを受けやすくなります。
ストレスが慢性化すると、これらの機能不全が胃潰瘍や十二指腸潰瘍を招くリスクを高めます。実際に、ストレスが原因で消化器疾患を抱える方は少なくありません。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍の検査
胃潰瘍や十二指腸潰瘍を確認するための検査方法をご説明します。
内視鏡検査(胃カメラ)
最も一般的な検査で、直径約1cmの柔軟なチューブに小型カメラが付いた内視鏡を使用します。口または鼻から挿入し、胃や十二指腸の内壁を直接観察できます。潰瘍の有無、大きさ、形状など詳細な情報を得ることができます。
内視鏡検査は、胃や十二指腸の病変を直接見ることができるため、非常に正確な診断が可能です。不安を感じることはあっても、この検査によって早期発見、早期治療へとつながる可能性が高まります。
バリウム検査(X線検査)
胃の形をX線で撮影する前に、患者様はバリウムという白い液体を飲みます。バリウムが胃の内壁に付着し、X線に映ることで、潰瘍の位置や胃の動きを観察します。
ヘリコバクター・ピロリ菌検査
この菌の感染は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の一般的な原因です。血液検査、便検査、呼気検査などで感染を確認します。
生化学的検査
血液検査を通じて、貧血の有無や全身の状態を把握します。また、潰瘍が出血している場合は、血液中のヘモグロビン濃度の低下が見られることがあります。
胃薬だけでは足りないかも?胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療法
胃の痛みに胃薬を服用することは一時的な解決策にはなり得ますが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が原因である場合、より専門的な治療が必要です。では、どのような治療法があるのでしょうか。
ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌
ヘリコバクター・ピロリ菌が潰瘍の原因である場合、抗生物質を使用した除菌治療が行われます。この治療は再発を防ぐ効果もあり、日本では潰瘍治療の標準的な治療方法となっています。
酸分泌抑制薬
酸分泌抑制薬は、胃酸の分泌を抑えて潰瘍の治癒を促します。これらは胃薬としてよく用いられる薬剤です。
制酸薬
胃の中の酸の量を減らすことで、痛みの緩和と潰瘍の治癒を助ける薬です。
胃粘膜保護薬
粘膜保護剤は、潰瘍の上に保護膜を形成し、胃酸から粘膜を守ります。
生活習慣の改善
ストレスの管理、禁煙、節酒、バランスの良い食事など、生活習慣の見直しも治療の重要な部分です。
統計によると、適切な治療を受けた患者様の多くが、症状の改善を実感しています。自己判断での胃薬のみの使用は、症状を見過ごすリスクがありますので、ご注意ください。
胃の健康を守るために
胃の健康は、日々の生活習慣に深く根ざしています。胃潰瘍や十二指腸潰瘍を未然に防ぐためには、生活習慣の見直しが不可欠です。以下に、胃の健康を保つための重要なポイントをいくつかご紹介します。
食生活の改善
バランスの良い食事
栄養素をバランス良く摂取し、食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れましょう。
適切な食事のタイミング
食事は規則正しい時間に取り、就寝前の食事は避けましょう。
ストレスマネジメント
リラクゼーション
深呼吸や瞑想、趣味の時間などを設け、積極的にリラックスする時間を作りましょう。
適度な運動
ストレス解消にも効果的で、胃腸の動きを促進します。
生活習慣の見直し
禁煙
タバコは胃酸の分泌を促し、胃の粘膜を刺激するため、胃潰瘍のリスクを高めます。
節酒
アルコールも胃の粘膜を直接刺激するため、過度の摂取は控えましょう。
定期的な健康診断
ヘリコバクター・ピロリ菌の検査
感染があれば除菌治療を行い、胃潰瘍のリスクを下げます。
内視鏡検査
胃の状態を定期的にチェックし、異常があれば早期に対処しましょう。