食道裂孔ヘルニアとは
食道裂孔ヘルニアとは、お腹の中の一部が食道を通っている胸部へと移動する状態を指します。これが起こる原因は加齢や体内圧の増加など、さまざまです。多くの場合、特に症状を感じないこともありますが、胸やけや酸逆流を引き起こすことがあります。
統計によると、食道裂孔ヘルニアは高齢者に多く見られ、特に60歳以上でその傾向があります。
最新の研究では、食生活や生活習慣の変化が食道裂孔ヘルニアの発生に関与していることが示唆されています。
食道裂孔ヘルニアの原因
食道裂孔ヘルニアの原因には、いくつかの要因が考えられます。まず、食道裂孔ヘルニアは、食道と胃を隔てる横隔膜の開口部、つまり裂孔が拡大することで生じます。この開口部の拡大は、様々な理由で起こりえますが、特に加齢による横隔膜の筋肉の弱化が主な原因の一つとされています。
統計によると、肥満や喫煙といった生活習慣がこれらの筋肉をさらに弱めることも指摘されています。また、重い物を持ち上げる動作や、激しい咳が続くことで内腹圧が上がり、それが裂孔の拡大を促すこともあります。
食道裂孔ヘルニアの発症には、遺伝的要因が関わっている可能性が示されており、家族歴がこの状態のリスクファクターとなることが報告されています。
食道裂孔ヘルニアの原因には直接的なものと間接的なものがありますが、生活習慣の改善や適切な体重管理が予防に有効であるとされています。特に、食事の内容や食べ方、運動習慣の見直しは、ヘルニアのリスクを減らすために重要です。
食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎について
食道裂孔ヘルニアとは、胃の一部が横隔膜の裂孔を通って胸腔内にずれ上がる状態を指し、これにより逆流性食道炎が起こることがあります。逆流性食道炎は、胃酸が食道内に逆流し、食道の内壁を刺激する病状です。これらは互いに関連し、食道裂孔ヘルニアがあると逆流性食道炎を引き起こしやすくなります。
統計によると、食道裂孔ヘルニアは成人の約10％に見られ、特に年齢が高くなるにつれてその頻度は増加します。逆流性食道炎も同様に一般的で、世界中で多くの方々がこの症状に悩まされています。
食道裂孔ヘルニアが逆流性食道炎を引き起こす原因は、横隔膜の裂孔を通過してしまった胃が食道の下部にある弁の機能を損なうためです。この弁、下部食道括約筋（LES）は、通常、胃酸が食道に逆流するのを防ぐ役割を担っています。裂孔ヘルニアがあると、LESの圧力が低下し、閉鎖不全を起こすことがあります。
症状としては、胸焼け、喉の痛み、食べ物や酸の逆流、嚥下困難などがあります。これらの症状は食事後や就寝時に悪化することが一般的です。
食道裂孔ヘルニアの症状
引き起こされる症状は様々で、中には全く自覚症状がない方もいますが、一般的な症状には次のようなものがあります。
まず、胸焼けが挙げられます。これは胃酸が食道に逆流することで起こり、特に食後や横になった時に感じやすい症状です。
次に、胸の痛みや不快感があり、これは胸の真ん中あたりで圧迫感として現れることが多いです。さらに、食べ物や飲み物を飲み込む際の違和感や痛み、嚥下困難も見られることがあります。
他にも咳や声のかすれ、そして時には食事が胸まで戻ってくるような感じ（逆流）を伴うこともあります。
また、これらの症状は食後に悪化する傾向がありますが、運動や体を前かがみにした際にも症状が現れることがあります。
これらの症状は、日常生活における不快感だけでなく、未治療のまま放置することで食道炎や食道潰瘍へと進行することもありますので、早期の診断と適切な治療が重要です。
食道裂孔ヘルニアの検査・診断
診断の第一歩として、患者様の症状の詳細や、食生活、身体活動などの生活習慣について詳しく問診を行います。
検査方法には、以下のようなものがあります。
患者様の食道、胃、十二指腸の内部を直接見ることができる検査です。食道裂孔ヘルニアの存在だけでなく、逆流による食道炎の有無も評価できます。食道裂孔ヘルニアの進行段階
食道裂孔ヘルニアにはいくつかの進行段階があります。これらの段階は、ヘルニアの大きさや種類、及び関連する症状の有無によって異なります。
- 初期段階：この段階では、胃の一部がわずかに食道裂孔を通って移動することがありますが、多くの場合、症状は軽微です。胸焼けや軽い逆流を感じることがあるかもしれませんが、日常生活に大きな影響はありません。
- 中間段階：ヘルニアが大きくなると、胃の更なる部分が裂孔を通過し、胸部に位置するようになります。この段階では、胸焼け、逆流、食事後の不快感がより頻繁に、また強く感じられるようになります。
- 進行段階：さらにヘルニアが進行すると、胃の大きな部分が常に裂孔を通過し、胸部に留まることになります。これは固定性ヘルニアと呼ばれ、食道への影響が大きくなり、嚥下困難や呼吸困難などの重篤な症状を引き起こすことがあります。
更に進行が進んだ段階：最も重度の場合、胃の一部が裂孔を通り抜け、胸部に固定されることで、胃の血流が妨げられることがあります。これは胃の一部が壊死するリスクを伴うため、緊急の治療が必要です。
食道裂孔ヘルニアの治療
食道裂孔ヘルニアの治療は、症状の程度や患者様の健康状態によって異なります。
軽度の症状がある場合は、生活習慣の改善で症状を管理することが多いです。具体的には、食事内容の見直し、食後すぐに横にならない、適度な体重管理、禁煙、飲酒量の制限などが挙げられます。
薬物療法が必要な場合は、胃酸の分泌を抑える薬が処方されることが一般的です。これらの薬は胸焼けや逆流の症状を軽減する効果があります。通常、これらの薬は数週間から数ヶ月間服用しますが、症状の改善に応じて適宜調整します。
さらに重度の場合や、薬物療法や生活習慣の改善で症状が改善されない場合は、手術治療が検討されることもあります。
最も一般的な手術は、腹腔鏡を用いた裂孔ヘルニア修復術（ファンドプリケーション）です。この手術では、胃を元の位置に戻し、裂孔を狭めることでヘルニアの再発を防ぎます。