尿潜血が陽性と言われた場合
尿潜血が陽性となる原因や対応法、健康上のリスクについて解説します。
尿潜血とは
尿潜血とは、尿に血が混じる疾患です。検査で尿から赤血球の成分であるヘモグロビンが検出されると陽性となります。なお、ヘモグロビン以外にも、ミオグロビンや精子などに反応して陽性となる場合もあります。
- ヘモグロビン尿(血尿):赤血球のヘモグロビンが尿中に混入している状態です。赤血球が血管や尿中で壊れることで生じます。
- ミオグロビン尿:筋肉細胞内のミオグロビンが尿中に混入している状態です。筋肉組織が壊れることで生じます。
- 赤血球以外の物質が存在:上記のほか、精子や細菌が存在する場合や試薬の誤反応によって陽性となることがあります。
検査結果がプラスマイナス(±)の場合は、ほとんどが正常と判定します。一方、+ (1+)、++ (2+)、+++ (3+)、++++ (4+)の場合は、すべて陽性と判定します。検査結果は、尿中の血液量が多くなるほど+の数も多くなりますが、+ (1+)~++++(4+)のどの場合においても対応は同じになります。
ヘモグロビン尿やミオグロビン尿は、程度が強いと尿の色が赤色や茶色に変色します。なお、厳密には血尿とヘモグロビン尿の定義は異なりますが、対応はほとんど変わらないため便宜上同じものとして扱います。
尿潜血陽性の原因
尿潜血の原因は、年齢や性別、症状などによって多岐に渡り、それぞれの対処法も異なります。一般的に35歳以下の血尿の場合は、ほとんどが一時的な症状のため特に問題がない場合が多いです。実際に、尿検査を受けた人の3人に1人は、疾患がないのに陽性反応が出ているという報告があります。
一方、尿潜血の陽性反応に原因がある場合は、一般的に前立腺や膀胱の炎症・感染症、尿路結石などの疾患や、けが、運動などが挙げられます。これらはいずれも比較的簡単な治療で症状を改善することができます。
ただし、尿が真っ赤に染まる血尿(肉眼的血尿)の場合は、10%程度の確率で膀胱癌が原因であるため、注意が必要です。また、目では確認できない血尿(顕微鏡的血尿)を発症しているケースもあり、35歳以上で顕微鏡的血尿が生じている場合は、腎臓や尿路に悪性腫瘍が生じている恐れもあります。一般的にがんは女性よりも男性になりやすい傾向があり、子どもの場合は肉眼的血尿IgA腎症などの腎臓の疾患の可能性があるため、早期の検査と治療が必要です。
その他、特に疾患や肉眼的血尿がないにもかかわらず、毎年尿潜血が陽性になる場合は、薄基底膜病などの体質的な原因が考えられます。このようなケースでは、精密検査は通常不要です。ただし、このようなケースのうち数%は、その後腎機能が低下して将来的に慢性腎臓病となる可能性が高いと言われています。したがって、尿潜血で陽性反応が出た場合は、定期的な健診を推奨しています。
妊娠中の女性の場合では、61%の確率で尿潜血が陽性になるという報告がありますが、赤ちゃんや母親にはほとんど影響はありません。ただし、尿潜血陽性が続く場合は、産婦人科の専門医に相談しましょう。
尿潜血が陽性と診断された場合の検査
尿潜血で陽性反応となった場合は、まず顕微鏡で尿検査を行い、尿中に赤血球が混入していることが原因か、それ以外の要因が関わっているかを診断します。尿中の赤血球が確認された場合には、赤血球の形状などを確認することで、腎臓に障害があるのか、それとも尿管や膀胱に障害があるのかを推定することが可能です。
顕微鏡検査後は、可能性のある疾患によって追加で検査を行います。
- 月経中や激しい運動を行った直後の場合は、後日再検査を行います。
- 喫煙者、35歳以上、男性、肉眼的血尿などによってがんのリスクが考えられる場合は、超音波検査やCT検査、膀胱鏡検査を行います。
- 尿潜血の他に尿蛋白陽性、腎機能低下などの腎臓の疾患の可能性がある場合は、血液検査やより詳細な尿検査を実施します。腎生検という腎臓に針を刺して組織を取る検査が必要となることもあります。
尿タンパクが陽性と言われた場合
尿タンパクの原因や対策、健康への影響について解説します。
尿タンパクとは
尿タンパクとは、尿中に基準値以上のタンパク質が含有している状態の疾患です。腎臓には、糸球体という血液をろ過してきれいにするためのフィルターのような働きを担っている部分があります。糸球体は、血液をろ過して老廃物や過剰な水分・塩分を除去したり、体に必要なタンパク質が尿に流れ出ることを防止する働きがあります。
本来は尿中にはほとんどタンパク質は含まれませんが、腎臓の機能が低下して糸球体が損傷を起こすと、タンパク質が尿に流れ出てしまうことがあります。1日に尿に出るタンパク質量が150ミリグラム以下の場合は正常ですが、それ以上だと尿タンパクと診断されます。
軽度の尿タンパクの場合は、ほとんど自覚症状は現れませんが、尿に大量のタンパク質が含まれると、顔や足、お腹にむくみが出ることがあります。
尿タンパク陽性の3つのタイプと原因
尿タンパクは、一過性(一時的なもの)、起立性(座ったり立ったりと姿勢に応じて発症するもの)、持続性(尿検査で毎回陽性となるもの)の3つに分類されます。
一過性尿タンパク
一過性の尿タンパクは、発熱や運動などによって一時的に起こる尿タンパクです。尿タンパクの中でも最も多く見られるケースで、特に治療は必要ありません。また、生理中も尿タンパクが陽性になることがあります。
起立性尿タンパク
起立性尿タンパクとは、立っている状態では尿にタンパク質が出るが、横になると出なくなる状態です。10代の2~5%の人に見られ、30歳以上ではほとんど見られなくなります。はっきりとした原因はまだよく分かっていませんが、特に治療の必要はなく、加齢とともに自然と治ります。起立性尿タンパクが疑われた際には、立った状態や寝た状態の時の尿中のタンパク質の量を比べて診断します。
持続性尿タンパク
持続性尿タンパクとは、検診等の尿検査で毎回のように尿タンパクが陽性となる状態です。このタイプの場合は他と違い、詳しい検査を行う必要があります。持続性尿タンパクの場合は、腎臓病や糖尿病、高血圧などの病気が原因の恐れがあります。
尿タンパクが陽性になった場合の検査
尿検査の結果は、尿中に含有しているタンパク質の量によって、±、+(1+)、++(2+)、+++(3+)、++++(4+)に分類されます。-や±の場合は特に問題ありませんが、1+以上の場合は追加検査を行う必要があります。追加検査の結果、再度陽性となった場合は、持続性尿タンパクの可能性が疑われるため、詳しく調べて原因を特定します。持続性尿タンパクを発症している場合は、症状が悪化していないかどうかや、腎機能が安定しているかどうかを確認するため、最低年に1回は検査を受けて状態を確認する必要があります。
追加で行う精密検査
尿タンパクの定量検査
健診で行われる尿検査では、尿中のタンパク質の量を正確に測定できません。より正確にタンパク質の量を調べるためには、定量検査という精密検査を行う必要があります。
定量検査は通常1回で行うことが多いですが、より正確な測定を行う必要がある際には、24時間の蓄尿を行うこともあります。健診の結果と定量検査の結果は必ずしも一致しないため、正確な状態を把握するには定量検査による確認が必要です。以下は検診と定量検査の比較表になります。
尿タンパク:検診の結果と定量検査の比較
尿定性検査(健診) | 定量検査で尿アルブミンが検出される確率 |
---|---|
- | 1.6% |
± | 5.2% |
1+ | 38.3% |
2+ | 85.4% |
3+ | 100% |
4+ | 100% |
※尿アルブミン:タンパク質の一種で、腎臓病の有無を調べる際の指標となります。尿タンパクの量よりも腎臓病のリスクや重症度をより正確に把握することができます。
血液検査
腎機能を調べるため、血液検査を行って血中尿素窒素(BUN)やクレアチニン、糸球体ろ過率(eGFR)を調べます。その他、疑われる疾患がある場合は、追加検査します。
腎生検
主に腎臓病の疑いがある場合に行われる検査です。腎臓の組織を針で採取し、顕微鏡で組織を調べます。
尿タンパクを改善する食事や治療
原因が腎臓病でない場合、特に食事制限は必要ありません。一方、腎臓病の場合は、状態によってタンパク質や塩分の摂取制限をかけることがあります。 尿タンパクの改善には、原因となる疾患を特定し、的確な治療を行うことが最も重要です。特に高血圧症状が見られる場合は、腎臓を保護する作用を持つアンジオテンシン変換酵素阻害剤などの降圧薬を使用することもあります。