TOPへ

人工透析内科

人工透析内科について

透析療法とは、腎不全が進み、低下した腎機能の代わりに人工的に血液の浄化を行う治療法です。腎臓は、機能が10%以下になると血液のろ過が十分に行えなくなり、水分や老廃物のコントロールができなくなります。そのような場合には、人工透析が適用されます。
当院では、血液透析の治療を行っています。また、シャントトラブル対応も院内で実施していますので、「音がしない、いつもと違う音がする」など不安に思うことがあれば、ご遠慮なくスタッフまでお声かけ下さい。なお、シャント造設と腹膜透析については、他の医療機関と連携して対応しています。


人工透析が必要になる原因

上記の通り、腎機能が低下した際に行われるのが、人工透析です。とりわけ大事なことを肝腎かなめと言いますが、これは肝臓と腎臓が我々とって極めて重要な臓器であることから生まれた言葉です。
腎臓は、血液をろ過してきれいにし、抽出した老廃物や有害物質を尿として排出する役割を担っています。また、身体に必要な成分を再吸収し、体内の水分と電解質のバランスをコントロールする働きもあります。そのほかにも、赤血球の産生を促すホルモンや血圧を調整するホルモンの分泌や、ビタミンDを活性化してカルシウムの吸収を助長するなど、人間が生きていく上で様々な役割を担っています。
したがって、腎臓が何らかの原因によって機能不全を起こすと、その働きを代替するために人工透析による治療が必要になります。

腎臓が悪くなるとどうなる?

腎臓の機能が低下して血液を十分にろ過できなくなると、身体にとって不要な老廃物や水分が体内に蓄積していきます。腎機能低下が3か月以上持続していると慢性腎臓病と診断され、そのまま放置しているとやがて尿毒症という重篤な疾患を引き起こします。
尿毒症の症状としては、倦怠感、食欲不振、胃のむかつき、吐き気、頭痛、身体のむくみ、高血圧、貧血などが挙げられます。さらに重症化すると、せん妄や全身痙攣といった神経・精神症状が現れるようになり、興奮時に呼吸困難を起こすなど命の危険を伴うようになります。そのため、腎機能の低下が見られた際には、早期に診断・治療を行うことが大切です。

慢性腎臓病の3大原因

人工透析が必要になる慢性腎臓病(CKD)を発症する原因には様々なケースが考えられますが、代表的な疾患として以下の3つが挙げられます。

糖尿病

糖尿病を発症して高血糖状態が続くと、腎臓の尿をろ過する役割のある糸球体という部分が損傷を受け、腎機能が低下してしまいます。全透析患者のうちこのような糖尿病の合併症である糖尿病性腎症で透析療法を導入している人は、約40%とされています。
糖尿病性腎症が進行すると、糸球体の中の毛細血管が破壊されてろ過機能が低下し、高血圧になることでさらに腎臓の状態が悪化するという悪循環に陥ることになります。

糖尿病

高血圧

高血圧状態が続くと、全身の動脈が硬化する動脈硬化を招く可能性が高まります。これは腎臓にとっても例外ではなく、腎臓にある無数の細い動脈が動脈硬化によって狭窄を起こすと、血液が十分に行き渡らなくなって腎硬化症となり、腎機能の低下を招く恐れがあります。

高血圧

慢性腎炎

慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)とは、腎臓の尿をろ過する役割のある糸球体を中心に、慢性的な炎症が起きる疾患です。発症すると、腎機能が低下してタンパク尿や血尿などの症状が1年以上にわたって生じます。1日に1g以上のタンパク尿が10年継続すると、約30%が慢性腎不全に移行するという報告もあり、注意が必要です。


透析の種類

血液透析

血液透析とは、体内の血液をいったん外に出し、ダイアライザー(血液透析器)という血液をきれいにする機械を通過させて不要な老廃物や水分を除去したあと、浄化された血液を再び体内に戻す透析法です。ダイアライザーは腎臓の糸球体と同様の働きを担っています。治療を行うには定期的な通院が必要になります。血液透析にかかる時間は、一般的に1回4時間、週3回ペースとなります。
なお、血液透析では一度に多量の血液をダイアライザーに流し込むため、腕の動脈と静脈を繋ぎ合わせるシャント作製の手術も同時に行う必要があります。

血液透析の方法

血液透析を受けるためには、まずシャント手術を行います。動脈と静脈をつなぐ手術で、これによって血管が太くなり、血液の取り出しや返血がしやすくなります。手術は局所麻酔で行われ、入院は不要です。手術後、数日間は血管の状態を観察するため、外来通院が必要となります。
手術後、1〜2週間ほど経ってから血液透析を開始します。血液透析は、週に3~4回、1回4~5時間かけて行います。

血液透析の流れは、以下のとおりです。

  1. 血管に針を2本刺し、血液回路(チューブ)につなぎます
  2. 血液ポンプを使って、血液をダイアライザー(人工腎臓)に送りますダイアライザーでは、血液中の老廃物や余分な水分が透析液に移されます。
  3. きれいになった血液は、体内に戻されます。

血液透析中は、本を読んだり、テレビを見たり、リラックスしながら過ごすことができます。

なぜシャントが必要か?

透析は、腎臓の機能代行として、血液中の余分な水分や老廃物を取り除く治療ですが、そのためには血液を機械へとスムーズに送り出し、きれいにした血液を体内に戻す必要があります。しかし、通常の静脈では血液の流れが狭く、透析には適していません。そこでシャント手術により、血液を十分な速さで機械に送ることができるように、血管を"拡張"します。 この手術は一般的に腕に行われ、静脈と動脈を直接つなぐことで、血液の流れを強くします。

血液透析の合併症

血液透析は、腎臓の機能を補うための治療法ですが、以下のような合併症が起こることがあります。

不均衡症候群

不均衡症候群は、脳の腫れやむくみによって引き起こされる状態です。透析導入期に起こりやすく、血液からの急激な物質除去が原因です。具体的な症状としては、頭痛、吐き気、嘔吐、血圧の低下、筋肉のけいれん、疲労感、時には意識の混濁まで見られることがあります。 これを防ぐためには、特に透析導入期において、血液透析の強度を徐々に高めていくことが基本となります。透析によって引き起こされる体液の突然の変化を抑え、透析液の成分濃度を調整し、時間をかけて穏やかに水分除去を行うことが推奨されます。

感染症

透析に伴って感染症に罹患するリスクがあります。透析アクセス部位の赤み、腫れ、痛み、発熱などが感染症を示唆する典型的なサインです。これらの初期症状を見逃さず、早期に対処することが重要です。感染が判明した場合には、医師による診察で病原菌を特定し、原因に応じて、抗生剤などの薬物治療を行います。
また、感染症を予防し管理するためには、透析前に手洗いや消毒を徹底する、透析後にカテーテルの周囲を清潔に保つなど、アクセス部位の日々のケアを怠らないことが肝要です。

高血圧

食事由来の水分や塩分が適切に排泄されず、体液量が増加することで高血圧になりやすいです。頭痛、めまい、鼻血や不整脈といった症状が現れることがあります。当院では、高血圧の管理には透析による水分コントロールの最適化、塩分摂取の制限、血圧降下剤の調整等を行います。また、生活習慣の見直しを含む、包括的な生活指導も提供しております。患者様の血圧管理を密に行い、高血圧に伴うリスクを減少させ、より健康な毎日をサポートします。

貧血

貧血となるのは、透析による赤血球の喪失やエリスロポエチン(赤血球を作るホルモン)の減少が主な原因です。疲労感、息切れ、肌の蒼白といった症状が現れることがあります。 当院では、貧血の症状に対して、定期的な血液検査によりヘモグロビン値をモニターし、必要に応じてエリスロポエチンの補充治療や鉄剤の投与を行います。また、栄養指導により鉄分やビタミンB 12などの栄養素を積極的に摂取するような食事をすることも推奨しています。

心血管疾患

心血管疾患では、主に、胸痛、息切れ、心拍の乱れ、腫れた足や足首、疲労感の増加というような症状が現れることがあります。当院では、これらの徴候を早期に捉え、心電図やエコー検査などを行い、心血管疾患の原因を調べます。原因に応じて、血圧と液体バランスの厳格な管理、適切な薬物療法、そして、必要に応じた生活習慣の改善指導を通じて、心血管疾患の予防と管理を行います。また、患者様の状態に応じた運動療法のプランも提供しております。

骨粗しょう症

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨を強くする効果があります。腎臓の機能が低下するとこのビタミンDの働きが悪くなり、骨粗しょう症のリスクが上がってしまいます。骨の脆弱化による痛みや、骨折をしやすくなることがその症状です。 当院では、カルシウムやビタミンDのバランスを調整し、適切な骨の健康をサポートします。栄養指導だけでなく、運動療法の導入で骨密度維持を促進いたします。

二次性副甲状腺機能亢進症

食事由来のリンが腎臓から排泄されなくなり、血液中にたまることで高リン血症になりやすいです。血液中のリンを下げるために過剰に副甲状腺ホルモンが分泌される状態を二次性副甲状腺機能亢進症といいます。このホルモンの働きにより骨からカルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度が上昇します。進行すると骨密度の低下、イライラ感、皮膚のかゆみなどの症状が現れます。血中のカルシウム、リンの濃度をモニタリングし、必要に応じリン結合剤やビタミンD製剤を使用することで体内のミネラルの正常化を目指します。

透析アミロイドーシス

透析アミロイドーシスは、透析によって血液中の老廃物が十分に除去されず、体内に蓄積されたタンパク質がアミロイドと呼ばれる物質に変化し、関節や神経、心臓などに沈着することで発症します。代表的な症状は関節痛です。手首や肩などの関節に痛みやしびれ、腫れが現れます。また、手根管症候群や肩関節痛、弾撥指などの症状もみられます。さらに、心不全や神経障害などの症状も現れることがあります。
治療には、薬物治療や手術が用いられます。薬物治療では、ステロイド剤や免疫抑制剤などが用いられます。手術では、沈着したアミロイドを除去する手術が行われます。
透析アミロイドーシスの予防には、透析のサイクルを適切に継続することが重要です。また、血液中の老廃物を適切に除去することも重要です。さらに、食事療法を行うことも、予防に効果的です。

血液透析における注意点

血液透析を受ける患者様は、日常生活において特別な注意が求められます。

食事

血液透析を受けている方の食事では、以下の点に注意しましょう。

塩分

塩分は、体内の水分を溜め込む作用があります。透析では、体内の水分も除去しますが、塩分の摂りすぎは、透析の負担を増やしたり、高血圧や心不全などの合併症を招いたりする可能性があります。
塩分摂取量は、1日5〜7g程度に制限しましょう。

カリウム

カリウムは、筋肉の働きに必要な栄養素ですが、過剰に摂取すると、心臓の不整脈や不整脈などの合併症を引き起こす可能性があります。
カリウム摂取量は、1日2,000mg程度に制限しましょう。
カリウムは芋類、豆類、果物などに多く含まれています。

リン

リンは、骨や歯の形成に必要な栄養素ですが、過剰に摂取すると、骨粗しょう症や透析アミロイドーシスなどの合併症を引き起こす可能性があります。
リン摂取量は、1日900mg程度に制限しましょう。
リンはハム類、チーズ、インスタント食品などに多く含まれています。

たんぱく質

たんぱく質は、体を作るのに必要な栄養素ですが、過剰に摂取すると、血液中の尿素窒素値が上昇し、透析の負担を増やしたり、貧血などの合併症を引き起こしたりする可能性があります。
たんぱく質摂取量は、体重1kgあたり1.0〜1.2g程度に制限しましょう。
たんぱく質は鶏肉、たまご、牛乳などに多く含まれています。

ビタミンやミネラル

血液透析では、体内のビタミンやミネラルも失われてしまいます。そのため、ビタミンやミネラルの摂取を心がけましょう。
ビタミンやミネラルは、野菜や果物、海藻類などに多く含まれています。

水分摂取

水分を摂りすぎると、体内に余分な水分が溜まり、むくみや高血圧、心不全などの合併症を引き起こす可能性があります。
血液透析を受けている方の水分摂取量の目安は、1日あたり500mL程度です。具体的には、以下の点に注意しましょう。
飲み物だけでなく、食べ物に含まれる水分量にも注意する
食べ物にも水分は含まれています。そのため、食べ物に含まれる水分量も考慮して、水分摂取量を調整しましょう。

シャントを守ること

シャントは、血液を透析器に送り出すために必要なものです。シャントが故障すると、透析が行えなくなり、生命に危険を及ぼす可能性があります。そのため、シャントの長持ちを図ることは、血液透析を受けている患者様にとって非常に重要です。
シャントの寿命は、一般的に3~5年程度と言われています。しかし、シャントを長持ちさせるためには、以下のようなことに注意する必要があります。

シャント部位の清潔を保つ

シャント部位は、細菌感染を起こしやすいため、清潔を保つことが大切です。毎日、シャント部位を石鹸で洗い、清潔に保ちましょう。

シャント部位に負担をかけない

シャント部位に負担をかけると、シャントの破損や狭窄の原因になるため、注意が必要です。シャント部位をぶつけたり、重いものを持ったりしないようにしましょう。

適切な運動

定期的な運動には以下の効果があります。

  • 臓や血管の健康を維持する
  • 筋力や体力を維持する
  • 骨粗しょう症を予防する
  • 生活の質を向上させる

以下の点に注意しながら運動を行いましょう。

無理をしない

心臓や肺などの機能が低下している場合があります。そのため、無理をせず、自分の体力に合った運動を行うことが大切です。

医師や看護師に相談する

医師や看護師に相談して、運動のプランを立ててもらいましょう。

透析前後は、十分に休息する

透析前後は、体調を崩しやすいため、十分に休息しましょう。

具体的な運動としては、ウォーキングなどの有酸素運動がおすすめです。
有酸素運動は、心臓や肺の機能を向上させる効果があります。
また、筋力トレーニングも取り入れましょう。筋力トレーニングは、筋力や体力を維持する効果があります。
週に3〜5回、30分程度の運動を心がけましょう。

内服管理

内服管理にも特に注意が必要です。透析治療中には、体内の薬物の代謝に影響を与えるため、処方された薬剤は指示された通りのタイミングと量で摂取することが大切です。また、透析により薬剤が除去されやすくなることがあるため、その影響も考慮に入れた服薬計画が必要になります。一方で、市販のサプリメントや他の医療機関で処方された薬も、当院や薬剤師と相談の上で使用してください。薬の重複摂取や不適切な組み合わせが、健康を害する恐れがあり、それを避けるためです。

腹膜透析

腹膜とは、胃や肝臓などの内臓の表面を覆っている薄い膜のことで、膜の表面には毛細血管が網の目のように張り巡らされています。この腹膜を利用して行う透析が、腹膜透析です。具体的には、腹部にカテーテルを挿入し、透析液を出し入れすることによって、不要な老廃物や余分な水分を除去します。腹膜透析は、血液透析のような大掛かりな装置を必要としないため、医療機関ではなく自宅や職場で透析が行えることがメリットです。
腹膜透析には、患者様自身が1日に4回程度の透析液バックの交換を行うCAPDと、睡眠中に装置を使って自動的に透析を行うAPDの2種類があり、患者様の生活スタイルに合わせた治療が行うことができます。


当院の透析治療

送迎サービスの提供

通院困難な患者様を支えるため、無料で送迎サービスを実施しています。
当院の専用車で患者様のご自宅からクリニックまで送迎しております。また、車椅子ごと乗車できる福祉車両も配備し、通院をサポートしております。

夜間透析

夜間透析とは、夕方17時以降に透析を開始し、夜21時以降に終了する透析治療です。夜間の時間帯に行うので、日中の時間を仕事や学校、家事などに使うことができます。当院では、透析治療と患者様の社会生活の両立を支援する目的で、毎週月曜日、水曜日、金曜日に夜間透析を行っています。

院内循環器内科、消化器内科との連携による合併症予防

透析中に循環器内科、消化器内科の医師が回診しています。透析に関連する心臓疾患、血管疾患、消化器疾患の早期発見に努めています。治療が必要な場合は、院内の専門医が治療に当たります。また、入院治療が必要な場合は、地域の総合病院と連携体制を整っていますので、スムーズに対応できます。

バスキュラーアクセス(シャント)トラブルの予防及び、院内シャントPTA治療

患者様一人ひとりのシャントがより長く利用でき、またシャントトラブルをより早期に発見するためには、経験豊富な医師、看護師、臨床工学技士がバスキュラーアクセスの状態を観察し、総合的所見より医師がアクセス管理を行っています。万が一シャントトラブルが発生した場合は、院内において循環器専門医自らシャントPTAを行い、トラブルを解消し、患者様の負担を軽減します。

コメディカルチームで透析治療しっかり支援

透析毎の医師の回診のみならず、毎月2回、医師・看護師・臨床工学技士・薬剤師・臨床検査技師が集まり、当院の維持透析患者様の健康状態を確認し、治療方針について検討会を行なっています。その検討会で翌月の目標体重、内服薬剤の処方内容、透析時の注射の内容、食事などの指導内容が検討され、翌月の治療に反映されます。

安全性へのこだわり

安全を重視したマニュアルを作成し、実行しています。また安全に透析が行えるような全自動のベットサイドコンソールを採用し、使用しています。

透析液へのこだわり

当院では、RO(逆浸透)装置の導入を行い、透析液の清浄化を追求してきています。透析液供給装置での透析液の状態チェックを1日何回も行い、安全に使用できる状態であることをいつもモニターしています。

快適な治療空間への追求

患者様出入りの利便性や、感染を低減するために当院の透析センターは、外来と別に透析専用の入り口を設けております。
透析室は、機能性と快適さの両方を追求しております。実績と経験が豊富な設計事務所に空間設計を行なってもらい、透析中に照明が直接患者様の目に入らないよう、間接照明に工夫を多く取り入れています。また、全透析ベッドにヘッドマウントT Vモニターを取り付けており、透析中に無料で利用いただくことができます。