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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは、足の静脈が太く、浮き出て見える病気です。 静脈には、血液を心臓に戻すための弁が付いていますが、この弁が壊れて血液が逆流してしまうことで、静脈が太くなり、瘤(こぶ)のようになってしまいます。
日本では1000万人以上の人が罹患しているとされており、女性に多く、高齢になるほど発症率が高くなります。


下肢静脈瘤の原因

静脈の弁の機能が低下する原因としては、以下のようなものが挙げられます。

遺伝的要因

静脈弁の機能に関係する遺伝子に異常がある場合、下肢静脈瘤を発症するリスクが高くなります。

立ち仕事や長時間の座り仕事などの生活習慣

立ち仕事や長時間の座り仕事は、足の静脈の血液が滞留しやすくなります。

妊娠・出産

妊娠中は、胎児の重さやホルモンの影響により、足の静脈に負担がかかりやすくなります。

肥満

肥満は、足の静脈に圧迫をかけ、血液の流れを悪化させます。

静脈の壁が弱くなる

静脈の壁が弱くなると、血液の逆流を防ぐことができなくなり、静脈瘤が形成されます。

静脈の壁が弱くなる原因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 加齢:加齢によって、静脈の壁は弾力を失い、弱くなります。
  • 外傷:静脈に外傷を負うと、静脈の壁が損傷して弱くなります。
  • 放射線治療:放射線治療によって、静脈の壁が傷ついて弱くなります。

下肢静脈瘤は、これらの原因が複合的に作用して発症すると考えられています。


下肢静脈瘤になりやすい人

下肢静脈瘤は、誰にでも発症する可能性がありますが、特定の条件を持つ人にはより発症しやすいとされています。以下に、その特徴をいくつかご紹介します。

女性

女性ホルモンの影響で血管が拡張しやすく、特に妊娠中はホルモンの変化と子宮の圧力によりリスクが高まります。

高齢者

加齢により血管の弾力が失われ、静脈の弁の機能が低下します。

家族歴

遺伝的要素が強く、家族に下肢静脈瘤の患者がいる場合、発症リスクは高まります。

肥満

体重が重いほど下肢への圧力が増し、静脈への負担が大きくなります。

立ち仕事

長時間立ち続ける職業に就いている人は、下肢への圧力が継続的にかかり、静脈瘤を発症しやすくなります。

運動不足

運動によって血液循環が促進されるため、不足すると静脈瘤のリスクが増します。

ホルモン治療や避妊薬の使用

これらは血管を拡張させる作用があるため、静脈瘤のリスクを高めることが知られています。


下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤には、いくつかの主要な種類があり、それぞれ特徴や治療法が異なります。主に以下の三つに分類されます。

表在性静脈瘤

最も一般的なタイプで、皮膚のすぐ下にある静脈が拡張して生じます。足の表面に青く太い線として見えることが特徴です。

伏在性静脈瘤

表在性静脈瘤よりも深い部分にある静脈が拡張します。表面からは見えにくいですが、腫れや痛みを感じることがあります。

網状静脈瘤(レチキュラー静脈瘤)

小さな静脈が網目状に拡張するタイプで、皮膚表面に青緑色の網目模様が現れます。

統計では、表在性静脈瘤は最もよく診断されるタイプであり、成人の約10-15%が何らかの形で経験するとされています。網状静脈瘤は比較的見た目の問題になりやすく、伏在性静脈瘤は症状が自覚されにくいため、しばしば見過ごされがちです。
これらの静脈瘤は、見た目の問題だけでなく、放置すると皮膚の変色や潰瘍を引き起こす可能性があります。


下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤は、ただ見た目が気になるだけでなく、さまざまな不快な症状を引き起こすことがあります。患者様が経験する一般的な症状には以下のようなものがあります。

足の重だるさ

立ち仕事の後や夕方にかけて、足が重く感じることがあります。

むくみ

静脈の圧力が高まると、足やくるぶし周辺がむくむことがあります。

むくみ

痛みやひりひりする感じ

引きつったような痛みや、ひりひりとした違和感を覚えることがあります。

かゆみ

拡張した静脈の周囲の皮膚がかゆくなることがあります。

皮膚の変色

静脈瘤が進行すると、皮膚に茶色や青色の変色を起こすことがあります。

静脈が浮き出る

皮膚の下で静脈がうねるように浮き出て見えることがあります。

これらの症状は、日常生活に影響を及ぼすことがあり、特に進行した場合には、皮膚の変色や炎症、さらには潰瘍(かいよう)といった重篤な状態に至ることもあります。
統計では、下肢静脈瘤の症状を訴える患者様の多くが、長時間立っている必要がある職業に就いている方々であることが分かっています。


下肢静脈瘤の診断・検査

下肢静脈瘤の診断は、まず皮膚の状態の確認から始まります。医師は足の静脈の状態を視診し、症状の有無や程度を確認します。
さらに静脈瘤の診断と適切な治療計画を立てるためには、より詳細な検査を行います。

超音波検査(ドプラー検査)

最も一般的な検査で、血流の方向と速度を測定し、静脈の弁の機能不全を評価します。

カラー・ドプラー超音波検査

血流の状態を色で表示し、どの静脈に問題があるかを特定します。これにより、正確な診断と適切な治療法が決定されます。

静脈造影

特定のケースでのみ行われる検査で、造影剤を使用して静脈の詳細な画像を撮影し、深部静脈血栓症などの合併症を調べます。

これらの検査は、患者様に痛みを与えることなく、静脈の状態を正確に把握するために行われます。日本静脈学会や国際静脈フォーラムの研究によれば、超音波検査は下肢静脈瘤の診断において非常に高い精度を持っています。


下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療は、症状の重さや静脈瘤の種類によって異なりますが、主に非侵襲的な方法から手術的な治療まで様々です。治療の目的は、症状の緩和と合併症の予防にあります。

圧迫療法

弾性ストッキングを使用して静脈に圧力をかけ、血液の逆流を防ぎます。日常生活において症状を軽減するための初期治療として推奨されています。

スクレロセラピー

薬剤を静脈に注入し、静脈を閉塞させることで血流を健康な静脈へと向けます。小規模な静脈瘤に効果的です。

エンドヴェナスレーザー治療(EVLT)

レーザー光を使って静脈を熱し、閉塞させる治療法で、局所麻酔下で行われます。

高周波閉塞治療

高周波エネルギーを使って静脈を閉塞させる方法で、レーザー治療と似ていますが、熱を利用する点が異なります。

手術(静脈切除術)

重度の静脈瘤に対して行われることがあり、拡張した静脈を体外に取り除きます。

これらの治療法は、最新の研究や技術の進歩により、より安全で効果的なものになりつつあります。治療を行わない場合、静脈瘤は進行し、皮膚の変色や炎症、潰瘍などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。


下肢静脈瘤を放置するとどうなる?

下肢静脈瘤は放置すると、ただの見た目の問題に留まらず、健康にも様々な悪影響を及ぼす可能性があります。初期段階では軽微な症状でも、時間が経過するにつれて深刻な合併症を引き起こすことがあります。

皮膚の変化

静脈内の圧力増加により、皮膚に栄養が行き渡らなくなり、皮膚の色素沈着や慢性的な炎症を起こすことがあります。

潰瘍形成

最も重大な合併症の一つで、特に足首周辺に慢性的な傷ができ、治りにくい状態になることがあります。

血栓形成

静脈瘤がある部分で血液が固まりやすくなり、血栓性静脈炎を引き起こすリスクがあります。

深部静脈血栓症(DVT)

血栓が深部静脈に形成されると、脚の重大な痛みや腫れを引き起こし、場合によっては肺塞栓症などの生命を脅かす合併症を引き起こす可能性があります。

統計によると、下肢静脈瘤の患者は、健康な人に比べて深部静脈血栓症のリスクが高くなるとされています。