末梢動脈疾患とは
末梢動脈疾患(PAD)とは、足の血管に動脈硬化が起こり、血管が狭くなったり、詰まったりして、足に十分な血液が流れなくなることで発症する病気です。
PADの原因は、動脈硬化です。動脈硬化とは、血管の内側に脂質やコレステロールなどが沈着して、血管が硬くなったり、狭くなったりする病気です。動脈硬化は、加齢、喫煙、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が原因で起こります。
PADの症状は、歩行時に足がしびれる、痛い、冷たいなどの症状が現れます。これは、足の筋肉に十分な血液が供給されなくなったために起こります。病気が進行すると、歩けなくなったり(間欠性跛行)、じっとしていても足が痛むようになったりします。
PADは、心筋梗塞や脳梗塞などの命にかかわる病気を合併することがあります。そのため、PADを重症化させず、また、合併症を防ぐためには、早期発見・早期治療が重要です。
全世界での患者数は2億人、日本では300万人を超えると推定されています。特に、喫煙、糖尿病、高血圧、高コレステロール、高齢者などがリスク要因となります。
末梢動脈疾患の症状
末梢動脈疾患(PAD)の症状は、主に下肢に現れます。
初期症状は、歩行時に足がしびれる、痛い、冷たいなどの症状です。これは、足の筋肉に十分な血液が供給されなくなったために起こります。
症状が進行すると、歩けなくなったり(間欠性跛行)、じっとしていても足が痛むようになったりします。
間欠性跛行
間欠性跛行は、PADの最も特徴的な症状です。歩き始めると、ふくらはぎや太ももなどの筋肉に痛みやしびれを感じ、歩けなくなります。しばらく休むと、痛みやしびれが治まり、また歩けるようになるため、間欠性跛行と呼ばれます。
間欠性跛行の痛みは、歩き始めてから数分以内に現れ、歩き続けると徐々に強くなります。また、階段や坂道を登ると、症状が出やすくなります。
安静時痛
病気が進行すると、歩行時だけでなく、じっとしていても足が痛むようになります。この痛みは、足の筋肉が完全に壊死する前に起こる、最後の警告症状です。
その他の症状
- 足の冷感
- 足の皮膚が薄くなる
- 足の爪が変形する
- 足の指が青紫色になる
統計によると、PADは高齢者に多く見られ、65歳以上では約12〜20%の人が何らかの形でPADを経験するとされています。PADの症状が心臓病や脳卒中のリスクと密接に関連していることが示されています。
末梢動脈疾患の診断
末梢動脈疾患(PAD)の診断は、医師の診察により足の痛みや歩行時の違和感を訴える場合、医師は足の脈を触ることから始め、脈の強さや皮膚の温度、色の変化をチェックします。
続いて、「足首上腕血圧比(ABI=足首血圧/上腕血圧)」の測定を行います。これは足首と上腕の血圧を比較するシンプルな検査で、PADがあるかどうかを示します。ABIの値が0.9未満の場合、PADの可能性が高まります。
血液検査や画像検査等も行い、より詳細な診断を行います。
血液検査
血糖値や脂質値、尿酸値などを調べて、動脈硬化のリスク因子を評価します。
画像検査
下肢動脈の狭窄や閉塞を直接的に確認することができます。
主な画像検査には、以下のようなものがあります。
ドップラー超音波検査
ドップラー超音波検査では、音波を用いて下肢動脈の血流を観察することができます。
CT血管造影検査
造影剤を用いて下肢動脈の内部を詳細に観察することができます。
MRI検査
造影剤を使用せずに下肢動脈の内部を詳細に観察することができます。
末梢動脈疾患の治療
末梢動脈疾患(PAD)の治療は、大きく分けて以下の3つがあります。
生活習慣の改善
PADの原因は、動脈硬化です。そのため、PADの治療の第一歩は、動脈硬化のリスク因子を改善することです。具体的には、以下のことに取り組みます。
- 禁煙
- 適正体重の維持
- 食事療法(脂質制限、塩分制限、野菜や果物の摂取を増やす)
- 適度な運動
薬物療法
生活習慣の改善だけでは、症状が改善しない場合は、薬物療法が行われます。主な薬剤には、以下のようなものがあります。
- 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
- 抗凝固薬(ワルファリンなど)
- 降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
- コレステロール降下薬(スタチンなど)
手術療法
狭窄や閉塞が重度の場合は、手術療法が行われます。主な手術には、以下のようなものがあります。
血管内治療
カテーテルを用いて、狭窄や閉塞部位を拡張したり、ステントと呼ばれる金属製の網状チューブを留置したりして、血流を改善します。
バイパス手術
狭窄や閉塞部位を迂回して、血液を流すための新しい血管をつくります。