むくみが気になる方へ
むくみは医学的には浮腫と呼ばれ、皮下組織に水分がたまっている状態を指します。足にむくみが起きやすいのは、重力の影響で足に水分が蓄積しやすいからです。
むくみは、塩分・水分の過剰摂取や長時間のデスクワーク・立ち仕事、長時間の運転など日常的に様々な原因で起こりますが、中には心疾患や腎疾患、肝疾患といった疾患の症状の一つとして発症する場合もあります。体重増加もむくみの症状の一つです。また、中には急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)のように、早急に適切な治療を行わないと命の危険を伴う場合もあります。初期症状を感じたら、早めに当院までご相談ください。
こんな症状はありませんか?
- 尿量が少ない・減少している
- 疲れやすい・倦怠感がある
- 足が痛む
- 何日もむくみが続く(シワができない)
- 足首やすねを指で押してへこませても、へこみの戻りが遅い
- 突然体重が増加した
- 足の血管が浮き出ている
- 息切れ
など
むくみの原因
上記の通り、むくみの原因は水分・塩分の過剰摂取や同じ姿勢で長時間作業する、運動不足など生活習慣が原因の場合もありますが、疾患の症状としてむくみが引き起こされている場合もあります。むくみを起こす疾患は、心臓や血管などあらゆるケースが考えられます。また、むくみやそれに付随する症状によって、原因疾患が悪化することもあります。中には、緊急性が高く、早急に適切な処置を必要とするむくみもありますので、注意が必要です。
心臓機能の低下
心疾患になると、心臓の機能が低下して全身に十分な血液を送り出せなくなる心不全を発症します。また、腎臓への血液供給も減少するため尿量も減少し、本来体外に排出されなければならない水分が体内に蓄積されていってむくみを引き起こします。
心不全によるむくみは、まず足に現れます。その後肺に水が蓄積されていくと、少しの動作動でも息切れを起こすようになります。
腎臓機能低下
腎臓は、血液をろ過してきれいにし、余分な水分や老廃物を尿として排出する器官です。腎臓の機能が低下すると、尿量が減少して排出されるべき水分やナトリウムが体内に蓄積し、むくみを引き起こします。また、尿からタンパク質が多く排出されて血液中のタンパク質が減少することによっても、むくみの原因に繋がります。
腎臓機能が低下する代表的な疾患として、慢性腎臓病が挙げられます。
肝機能の低下
肝機能が低下すると、肝臓はタンパク質の生成や毒素の分解といった役割を果たせなくなります。肝臓が生成するアルブミンというタンパク質が十分に生成できなくなる低アルブミン血症を発症すると、血液中の水分が血管から滲み出てむくみを起こします。
また、肝硬変を発症した場合も、血液が肝臓に入りにくくなるため、血液成分が血管から滲み出て、むくみを引き起こします。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症とは、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモン量が低下する疾患です。これにより代謝が大幅に低下するため、むくみや冷え性、体重増加、便秘、倦怠感などの症状が現れます。
むくみの症状は全身に起こり、顔や手、喉の粘膜などが腫れる場合もあります。症状は更年期障害やうつ病と似ていますが、甲状腺機能低下症の場合は血液検査で診断でき、適切に治療を行うことで改善します。
急性肺動脈塞栓症(エコノミークラス症候群)
急性肺動脈塞栓症とは通称エコノミークラス症候群と呼ばれるもので、長時間座った状態でいることで脚に深部静脈血栓ができる疾患です。発症すると、急激に足がむくみます。一般的に、長時間のデスクワークや飛行機での長時間の移動、災害時の避難生活による車中泊などで発症するケースが多いです。
この血栓が血流に乗って肺まで到達すると、肺塞栓症という命の危険を伴う疾患を発症することがあります。症状は血栓が留まっている部位によって異なりますが、息切れや胸痛、呼吸困難などを引き起こします。
突然の足のむくみを起こした際には、早急に救急医療機関を受診することを推奨します。
下肢静脈瘤
下肢静脈瘤とは、足の静脈に血液が溜まる疾患です。脚は心臓から最も遠い位置にあり、重力の影響を受けるため、ふくらはぎの筋肉が足の血液を心臓に戻すポンプのような働きを担っています。この筋肉の働きが衰えると、ポンプ機能が低下して足の静脈に血液が溜まり、足がむくんだり、皮膚の下が静脈瘤状に隆起したりします。
急性肺動脈塞栓症ほどの緊急性はありませんが、放置して病状が進行すると、下肢の皮膚に潰瘍や壊死を引き起こすことがあります。
むくみの検査
むくみの検査では、まずは問診にて症状の出現時期や変化の過程、むくみの誘因、基礎疾患、常用薬、水分摂取量などを確認して診断します。その後、むくみの原因に緊急性がないかを確認するために、心電図や超音波検査、胸部レントゲン検査を行います。
また、むくみの原因となる疾患は多岐に渡るため、血液検査を行って心不全の重症度を示すBNP、貧血、腎機能、肝機能、甲状腺機能などを調べます。深部静脈血栓症や肺血栓塞栓症の可能性があると判断した場合は、Dダイマーを調べます。
むくみ改善のためにできること
原因が疾患によるものと特定された場合は、原因疾患を治療します。体内に過剰な水分が蓄積している場合は、利尿薬などを処方する場合もあります。その他では、水分・塩分の摂取制限や食事療法、運動療法など、生活習慣の改善もむくみの改善には有効です。
マッサージとストレッチ
ふくらはぎを優しくマッサージすると、足に溜まった血液が心臓に戻り、リンパの流れを促進することができます。また、長時間デスクワークをしている方は、椅子に座ったままの状態でつま先とかかとを交互に上げる運動を適度に行うことで、ふくらはぎのポンプ機能が活性化してむくみ予防になります。その他では、血行を促進するために毎日、湯船に入って体の芯まで温め、入浴後にストレッチをしてふくらはぎの筋肉をほぐすのもお勧めです。
食事(食べ物)
食事は、むくみを解消する上で大切です。利尿作用のある食べ物や、体内の余分な水分を排出する栄養素を摂ると、むくみの改善や予防に繋がります。
以下は、むくみ解消に役立つ食品の例です。
カリウムを多く含む食品
カリウムは、体内のナトリウム(塩分)のバランスを調整し、利尿を促す作用があります。カリウムはバナナやアボカド、スイカ、ほうれん草、キウイフルーツなどに多く含まれますので、積極的に摂りましょう。
ショウガ
ショウガには抗炎症作用があり、むくみの緩和にも効果的です。ショウガ茶やショウガ含んだ料理などは、むくみの解消に役立ちます。
クランベリー
クランベリーには利尿作用があるため、むくみの改善や予防に適しています。また、抗酸化物質も含まれているため、体内の炎症を抑える働きもあります。
パセリ
パセリには利尿作用があるため、むくみの改善や予防に適しています。生のパセリをサラダに入れたり、スムージーに加えたりして摂取するなど工夫してみましょう。
柑橘類
オレンジやグレープフルーツなどの柑橘類には利尿作用があるため、体内の余分な水分を排出してくれます。
レモン水
レモンにも利尿効果があります。水にレモンの果汁を加えて飲むと利尿作用が促され、むくみの解消に繋がります。
運動
ふくらはぎは足の血液を心臓に戻すポンプ機能があるため、ふくらはぎを鍛えることはむくみ解消に繋がります。日常生活の中で、歩くスピードを上げる、一駅分多く歩く、なるべく階段を使うなど工夫してみましょう。運動は無理のない範囲で長く継続することが大切です。
また、長時間のデスクワークや長距離移動の際には、途中で意識的に立って歩いたり、かかとを上下運動したりするなど、心がけましょう。
弾性ストッキングの使用
弾性のストッキングは、足に適度な圧力がかかって足のむくみを解消したり症状を和らげたりする効果が期待できます。また、足の静脈から心臓への血液の戻りをスムーズにする弁に異常がある弁不全や、足の静脈血栓症の予防にも効果的です。
ただし、適切なサイズや圧力のものを選ばないと、十分な効果が得られないだけでなく、逆に血行障害や皮膚症状を引き起こすこともあります。医師に相談の上、ご自身に合ったものを着用しましょう。